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よもやま

くるりの《のぞみ1号》から溶け出したこと

急にレッスン日時が変更になったので
先日久しぶりに実家に行ってきました
こうして偶発的に時間がぽっかり空いたときしか
実家に行かないのもいかがなものかと思うけれど
そのくらいが私的にはちょうど良い頻度なんです

自宅の最寄り駅から電車で90分ほど
なんだかんだで一日オフの日じゃないと
慌ただしいのです

 

駅から実家までの道のりに
お墓のあるお寺があるので
ちょっと寄り道みたいな感じに
お墓参りをするのがいつものパターン

去年の年末
父の十七回忌を終えて
改めてその長い年月を実感して
今までどうしても腑に落ちなかったこと
あたかも自然の流れで
「ああ。そういうことだったのか」
色々な感情が
ひとつのところに収束していって
ゆるがない軸になりました
今回はそんな話

 

この日は何気なく
くるりの音楽をシャッフルで聞いていて
実家につながる電車に乗り換えたときに
《のぞみ1号》が再生されて
いきなり自分の深い所につながってしまいました

仕方ないから
どうにもならないこととか
素敵な夢見て
結局幻だったりとか
どうしようもないことを
ただ諦める
「前向いていこうや」
そんな声も耳を通過する

—《のぞみ1号》より—

父は18年前のクリスマスに
脳内出血で突然死しました
前夜にはなんの前触れもなまま
翌朝にはもう亡くなっていて
そこから数週間の記憶もあいまいです

 

身近な人が
前触れもなく突然亡くなるという経験は
私にとって
どうしようもないことを
ただ諦める初めての経験でした

もちろん
心の均衡を保つため
前向きに行こうと
声をかけるもう一人の私もいたけれど
次に来る諦めのつかない大きな波に
かき消されて・・・の繰り返し

 

葬儀で喪服を着ている自分
なんだか上っ面の言葉で感謝を伝える自分
昇華できない気持ちのまま前を向こうとしている矛盾とか
すべてがどこか別の世界のもののよう
心臓の奥をかきむしられるような感情が
一体どういう感情なのかもわからないまま
淡々と進む葬儀に
心がまったくついていかない

 

悲しいとか
感謝とか
たぶんそういうのじゃない
おそらくそれは
私のわがままな【怒り】だったのだろうと
今なら納得できます

 

その頃私はまだまだ生意気盛りで
父とはまともに話すこともなく
一人で生きていけるという傲慢さだけが前に出て
自分のことだけに必死になってた時期だったので
そもそも
素直に自分の感情に向き合うこと
とても苦手で
その意味も方法もわかっていませんでした

 

父に感謝を伝えることとか
父とちゃんと話をする時間を持つこととか
そういう余裕のあることは
そのうちできることと思い込んでいて
今、このときの自分ができないことを
見て見ぬふりをしてやり過ごしていました

 

だから
ちゃんと話すチャンスを逃したこと
父とのつながりを実感して共有できなかったこと
それを私が素直に父と話すこと
それができないまま
急逝した父に対しての【怒り】

そこからつながる
もっともっと昔の自分

 

奪い合うことで意味を持った恋愛とか
すっかり依存することがすべてだった恋愛とか
すり減らして消耗してささげる押しつけがましい恋愛とか

 

そんないびつな自分を
すっかりきれいにラッピングして
さも美しい歴史に置き換えてる
自分の欺瞞に対する【怒り】

 

それでもその時その時の自分は
常に一生懸命だったから
イタいとか
こじらせてるとか
黒歴史として封印するとか
そうやってまた別のラッピングをすることなく
そのままを
今の自分に直結する自分として
ただ受け入れること
瞬間的にできました

 

そうすることしかできなかったいじらしい自分
怒りで攻撃するのではなく
がんばったんだねと
慈しんで溶かし込む

 

父への怒りと思われた胸の奥のかきむしり感は
本当はすべて自分に対する怒りだったとわかって
自然と湧き出たのは
父への感謝でした

墓前で伝えた「ありがとう」
今回ばかりは
ちゃんと心の底からの言葉だったので
口から出た言葉と
気持ちが一つになって
違和感がない

人の心
信を問う
この輝かしさよ
雨を降らし
朝日を浴びて
勝手に立ち上がる

そーゆうことかもしれないなと
誰かが言おうとも
あてにせず

背筋をただし
あせることなく
あきらめずに
立ちはだかれ
ここに生かされている

あきらめずに
立ちはだかれ
涙なんか流すな

—《のぞみ1号》より—

怒りが溶けたら感謝があふれて
父の存在をありがたく感じて
生まれてから今の今まで
常に守られていることを知りました

 

いまこの心境に至るまでにかかった
18年間
父はまるで最初から知っていたかのようで
いま生かされてるという
ゆるぎない実感とともに
むせかえるような満開の桜と
色々な感情が自然に収束しました

大好きだな
この夕日を見送って
走れ走れ走れ走れ

—《のぞみ1号》より—

腑に落ちない思いは
いつまでもそのままじゃなくて
いつか溶け出して
ひとつに収束する

 

辛い思い
どうしようもない怒り
封印してしまいたい過去
あえてそれを
無理やり引っ張り出さなくたって
良いのだと思います
あきらめずに立ちはだかる
それで良いのだと思います

くるりの《のぞみ1号》は
岸田君が東日本大震災にシンパシーを感じ
人の心の痛みと強さ
無駄のない言葉で紡いだ名曲

 

震災の被災者のみなさんの心にもしみわたったことと思います
そして
被災者だけでなく
私のような人にも人の生の力強さ
思い出させてくれた曲となりました





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